三島風穴

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三島風穴緊急調査報告(2010.2.6)

はじめに
 三島市所有の三島風穴総延長298.9m+α(JR三島駅北口前広場(旧三共製薬(株)敷地)の埋め立ての計画が予定されていると聞き、三島風穴の現況把握のため三島市の許可を得て、平成22年2月6日に洞窟内部の緊急調査を行なった。

洞窟位置、発見の経緯および現在の管理者
 三島風穴はJR三島駅(東海道新幹線側)北口より徒歩1分にある道路の交差点直下に存在し、近傍には東洋レーヨン、東横イン、三島駅北口、市営三島駅北口駐輪場、三島長陵高校などがある。都市の中心部にある稀有な洞窟である。
 三島風穴は昭和28年に三共製薬(株)の井戸工事中に、洞窟側壁を破ったことで発見された玄武岩質溶岩洞窟であり、三共製薬(株)の敷地内に洞口が存在していたため、私有地として一般市民の立入りは出来なかった。三共製薬の移転により三島市に開放されたものである。旧三共製薬の私有地にあった関係で、天然記念物や史跡には登録されていない。

三島風穴の特徴
 三島風穴は、約1万4000年前に富士山の噴火により流れ出した三島溶岩流内(長さ30km以上と推測)の最も下流末端部の位置(海抜43m)に形成された溶岩洞窟で、発見された富士山の溶岩洞窟では最古のものであると見なされている。 三島溶岩流末端付近に存在するため構造も複雑で、洞内の溶岩は酸化され赤褐色をしている。内部は広いホール状に洞窟を形成し、壁の一部に珪酸鍾乳が、床面には縄状溶岩床が見られ、天井には溶岩鍾乳石が形成されている。このように内部には溶岩の流動・二次生成物などの、溶岩流出当時の地表では観察できない諸特徴がそのまま保存されており、また真洞窟性動物が多いために、学術上貴重な洞窟であると考えられている。

現況調査結果
 洞口である井戸は厳重に鍵のついたマンホール状の鉄製蓋で守られ、地表から8b下の横穴洞口までは立派な鉄製梯子が設置されている。洞窟内の一部の天井は地表からの工事等による崩壊が見られ、地表から砂利等が流入している。
 南側と北東、南側と北西、南側と早稲田支洞をつなぐ洞窟の中央付近(道路下)の崩落部分以外は天井崩壊はほとんど無く、貴重な生成物(珪酸鍾乳石や明確な形状を示す溶岩棚や貴重な鉱物など)がそのまま残され、東横イン方向の支洞には、深さ20cm以上のコウモリグアノの堆積物が観察された。 土砂の流入と崩壊部分をのぞいて保存状態はおおむね良好である。
 交差点真下に当たり埋め立て予定区となっている北西部の洞内にはコウモリグアノの他、珪酸華(珪酸鍾乳石)や二次生成物(洞穴鉱物)が観察され何らかの形で保護してもらいたい空間である。
 後世に悔いを残さないよう学術的に貴重な資料の保存方法や埋め立て工法、埋め立て材料の選択の慎重な検討がのぞまれる。
 溶岩柱ホール、支洞等を含め貴重な自然遺産として残す方向での検討を希望したい。

静岡県他市の保存対策の例
 静岡県富士宮市では、溶岩洞窟の上を車が頻繁に通る道路が敷設されたり、建物が建設されたりしているが、少しでも対応可能な保護対策を実施するとの方向で、天然記念物や史跡に登録されていないにもかかわらず、補強工事を行ない溶岩洞窟の保存維持管理に力を尽くしている。
 富士市でも同様、道路下の洞窟が保護されている。

おわりに
 三島風穴は都市中心部の道路直下や建物近傍にあり人為的補強は必要と考えられるが、学術的に見て自然遺産として貴重な溶岩洞窟でもある。三島市は、洞窟にセメントを注入して地下空間(三島風穴)の補強計画を立案しているようであるが、溶岩柱ホール、洞窟支洞部等は貴重な自然遺産として残す方向での検討を希望したい。 また補強や埋め立てざるを得ない部分については後世に悔いを残さないように学問的資料の保存方法や埋め立て工法および埋め立て材料の選択の慎重な検討を希望したい。

 (調査参加者:火山洞窟学会会員:立原弘、勝間田隆吉、川村一之、伊藤裕、伊東典夫、宮下弘文、木崎裕久、宮崎哲、星野誠三、松澤亮、小山啓介、協力:大島治(火山・岩石)、および協力一般参加者:長谷川謙他1名、以上14名。三島溶岩流の年代は、三島アメニティ大百科より引用しました。)

以上


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